もうすこしで天竺

読書記録など。

橘玲『臆病者のための株入門』:リテラシー=バランス感覚を身につけよ

読んだ本の内容を忘れることを恐れる臆病者の読書備忘録スタート。

 

近頃、資産形成という言葉に興味がある。

なにせ年金基金は政府による運用の失敗で数兆円が一夜にして吹き飛び、この先も庶民の生活が向上するとは思えない。だから、私たちは自分の力で一生やりくりしていかなくてはいけない。

ただ、私は現在ワープア

運用してその利益が、きちんと手に触れられる収入になるほどの資金はとてもない。

しかしこのままでは、死ぬまで金のことばかり考え続けることになる。たとえどこかの公務員や正社員として就職したとしても、ずっと。それは嫌だ。

 

だから、今からきちんとした収入が得られるときのことを考えて、この本を手に取った。もしかしたら、金のことを考えなくても暮らしていける人生を手にするヒントがあるのではないかと考えて。

 

読んだ結果、確かにその答えは書いてあった。

「金のことを考えなくても暮らしていける人生」は、確かに獲得することができる。

ただしそのためには、「リテラシー」を身につけなくてはいけない。

 

この本でリテラシーとは、極めて常識的な、人間的な判断のことを指している。

例えば、貧乏人はリスクのある株に、多くの金をつぎ込んではいけない。一方公務員のような安定した職にある人は、多少リスクのある株に手を出しても安心だろう。なぜなら、自分自身という最後の頼みが安定した状態にあるから。

このことを橘は「自分自身をポートフォリオに含める」と難しい言い方をしているが、これは要するに、まっとうな庶民的常識でもある気がする。

貧血のときに、あえて激流の上にかかった穴だらけの橋を渡ることはない。

 

ほかに、「美味しい話には必ず罠がある」という教えもそうだ。

証券会社や銀行の売る商品の裏に必ずある、その商品が売る側に利益を生み出す仕掛けを見抜けという。その仕掛けを完全に見抜くことは、正直素人には難しい。

しかし、簡単な儲け話などないというのは、堅実な人なら誰でも知っていることではないだろうか。

 

誰でも簡単に稼げるなどというのは明らかに誤りだが、地に足のついた常識と知性を働かせれば、投資した資金に見合った利益を上げることは可能だろうと感じた。

少なくとも、銀行に預けて年間1円くらい金利を得るよりはずっと。

 

臆病者のための株入門 (文春新書)

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