もうすこしで天竺

読書記録など。

『アナと雪の女王』

せっかく見たのに感想も書かずに済ませるのはもったいないので、ここにメモしておく。

 

 

物語は実にシンプル。対立したふたつのものごとがある。それを和解させるにはどうすればいい? 

ストーリーに従えば、答えは「真実の愛」。

これについてもうすこし具体的に書いてみる。

 

まず、物語は明確に白黒分けようとする。陰気な姉と陽気な妹。夏と冬。閉じたドアと開いたドア。男と女。動物と人間。敵と味方。

これらは、雪が降れば夏がかき消されてしまうように、いずれも互いの存在におののき、共存することが難しい。姉の抱く恐怖は、そのような「一方しか存在し得ない場所で、相手にかき消されてしまうことを恐れる」というもの。

そもそも物語の最大の問題は、魔法を使える姉の出奔だった。これは、権力を奪うことを目的に王国へ侵入した他国の貴族が、男を知らない妹をたらし込んだことによる。男と女の共存が難しいことが示される。だから門を閉じた城壁のなかは、姉妹だけの「女だけの世界」だった。

 

しかし、そうした対立する両者を和解させるキャラクターとして象徴的なのがクリストフ。彼は「夏に冬山から氷を運んでくる人」。つまり、夏と冬を共存させている。

しかも彼は、飼っているトナカイの言葉を代弁したり、岩と会話したりもできる。人と動物というこれまた共存が難しい二者を橋渡ししている。

(とはいえ彼も不調なときは、トナカイに「お前の言っていることは意味がわからないぞ」と言ってしまっている。これが彼の不調を示すことは、彼の態度からも明らか)

 

彼の出現がきっかけとなって姉妹は「愛」に気がつき雪が融けるわけだが、結末は「相容れなかった二者」が共存する様が描かれている。

わかりやすいのは雪だるま。冬のものなのだが、魔法の力によって夏にも存在できるようになった。かつては「あちらを立てればこちらが立たず」だったものが、エンディングでは共存できている。

 

これはちょうど、歌のようなもの。物語の冒頭、歌のなかでは姉妹がすでにひとつのメロディを刻んでいた。ときに姉が主旋律を、ときに妹が主旋律を歌うような仕方で。どちらかが主、どちらかが副で、ひとつの歌になる。これは物語の結末を予告するようなもの。ミュージカルアニメという珍しいジャンルをうまく使ってた。

 

とはいえ、こうした両立不可能なものを両立させることを意図する物語なら、最後の場面で罪人が追放される場面はどうにかならなかったのだろうか。罪は別問題で、無実の者と有罪の者は共存できないのだろうか? それも一理あるが、そのせいで、共生を描く物語の最後に、追放される者がいることになってしまった。このへんにも、なにかしら物語的な解決を見せてほしかったとも思う。

 

まあ、そんな感じだろうか。『アナ雪2』も見たほうがいいんだろうか……